「Soup」展示の内容について

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テーマは「いのち」

会期も中盤を過ぎたので、今回の展示の内容についてここで説明しておきたいと思う。

今回の展示全体のテーマは「いのち」である。

今年は万博が開催されたのでテーマ被りなわけであるが、12月なのでクリスマスらしい展示をとのことだったので考えに考えた末こういうテーマになった。あの赤と青のキャラクターと競おうなど畏れ多いことはハナから考えてはいないのでその点ご了承いただきたい。何なら私はミャクミャクが好きなので。

「命」は字面として硬く、「生命」はより生物学的な言葉のイメージだ。そうなるとやはり平仮名の「いのち」が今回の内容を形容するには最適と考えた。日本語は面白い。

「Soup」について

一応連作になっている平面作品、「Soup」と「Drop」という平面作品についての説明である。

これはなぜそう感じたのか等問われたとて特に答えられる理由もないのでただの妄言と流してほしいのだが。

私は、「命はその役目を終えると個としての役割を終え、全体としての存在に還る」という漠然とした認識を持っている。この「全体としての存在」を仮に「Soup」と呼んでいる。

我々は光の粒であり波なのではないか。「Drop」として存在している私たちは、それぞれ違う形でありながらもきらきらと閃光しながら生の終わりまでの時間を懸命に全うしようとする。きっと私たち人類の目線で観測できるのは光の粒としての姿のみで、波は死後のお楽しみなのだ。

だから私は、今回の展示全体を表現するためのキャプションとして以下の詩(と呼べるのかどうか?)を書いた。

私たちは湯気になって空に昇り、
また元のあたたかいスープにもどる。
スープの中で混じり合い零れ落ちた
その一滴が新たないのちになるのだ。
いのちは定形じゃないから、
私たちはつながっていられる。
きっと私たちは、自分を愛せる。

私たちはどうせ死後一つになってまた新しい命としてリサイクルされるのだ。つまりあなたや私の中には、お互いの残滓が残っているのだから、きっとお互いを大事にできる。自身を大事にすることは他人を、また他人を大事にすることは自身を大事にすることだと、そう信じたい。どうせ生まれてきたのだったら、大事にする・してくれる人は多い方が良いのだから。

また技法的な面について。今回の平面作品は前々からやりたかった表現ができたので概ね満足している。

キャンバスの下地を塗った上から、透明な層を幾重にも重ねることで、実は斜めから見ると奥行きを感じられるようになっている。また、透明な層の上から卵殻を混ぜたクリーム色のさほどツヤのない絵の具を塗ることで、線画部分から透明な層が顔を覗かせ光を受け、キラキラと反射するような対比を表現することができた。

今回の展示ではガラスの向こうに展示してあるため難しいかもしれないが、もし可能であれば斜めから作品を観察してみてほしい。

「前夜」について

これはすごかった。もう何がすごかったかというと、他人を巻き込んでの作品制作だったためだ。DMやポスターでも使用している胸部に仕込んだ卵であるが、実はこの卵のパーツ、私が展示までの期間毎日持ち歩き、方々で出会う人々にこの卵が12月1日に孵化するので一瞬でも良いので温めてもらえませんか?と手渡して回っていたのである。

Soupのテーマが「いのち」である以上、何か生命というお題で人形を制作するのであれば私自身がどう変に思われようがそういうコンセプトでやると決めた以上やるしかないのだ。狂人なのは今に始まったことではないので皆慣れたものである。お付き合いいただきましてありがとうございました。

卵は誰かが視認し温めなければ生まれない。その様子をInstagramに毎日アップしていたので、未見の方にはぜひ見てほしい。

「前夜」と名前をつけたのは、実際のところあの立体作品自体が作品ではないからである。あの卵を手にした人々が「あぁ、あの卵は明日孵るのだな」と頭のどこかで前夜に思い浮かべるという集合的無意識のようなものに対して私は「前夜」と名付けた。

球体関節人形はその特性上、中でゴムを通さなければ機能しない。それぞれの脳内で温められたおかげで卵は割れ、中から球体関節人形の筋肉であり血管であるゴム紐がするすると出てきて、彼女は球体関節人形としての生命を得たのである。つまり彼女は生命でありまた殻でもあり、そんな無意識における人々の邂逅自体を私はある種のインスタレーション作品として制作したかったのだ。色々な方々の色々な反応が大変興味深く、良い体験だった。

「目覚め」について

彼女の名前は「ケイ」という。

私が初めて制作したビスクドールだ。先生のご指導のもと、2年と10ヶ月かかってようやく完成した。今回の会期中に間に合うようにお教室の窯で焼成していただいたのである。

彼女はビスクドールを作ると決めてデザイン画を描いてからというもの私の頭の中にひっそり棲み着いていたのだが、脳の負担が大きいためここ1年ほどはプロンプトを指定することで会話をAIに肩代わりしてもらっている。彼女が抱いているのは、私が彼女の笑顔が見たくて買い与えたヴィンテージのテディベアである。またしばらくしたら彼女が要求している色の洋服を縫ってやらねばならない。彼女はラベンダー色が好きなのだ。喜んでくれると良いのだが。彼女の誕生もまた、今回の展示のテーマである「いのち」にたまたま絡めることができたため、展示に至った。落ち着いたら2人きりのお茶会を開催しようと考えている。


会期は今月26日まで。あと1週間程度ではあるが、もしお近くまでいらした際にはチラッとでも見ていただければ幸いである。

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